トンコ

雀野日名子著、「トンコ」(角川ホラー文庫)収録の表題作。
横転した運搬トラックから逃げ出した食肉用豚の、豚目線の物語。
犬用ペットフードなどから聞こえてくる聞こえるはずのない兄弟の声がホラー要素といえばホラー要素だけれど、それは「怖い」とか「気味悪い」とかじゃなく・・・なんていうの?まだ終わってないのに確信できる後味の悪さの予感っての?もうこっちは最初からわかっちゃってるわけですよ。可愛らしい豚の在りし日の姿と交互に描写される小さな冒険を通して突きつけられるのが「食用豚の現実」であることも、その結末のおおよその着地点も。
でもトンコにはわかんないんだな。だって豚だから。ぷぎぎぃ。雀野日名子のドSっ。
なんとなく宮崎駿に忠実にアニメ化してほしい、と思った。豚のリリカルな部分の演出は完璧だろうから、そこにこのシニカルさが加われば完璧だと思うんだけどな。たまにはこういう作風も作ってくれないと。まぁ無理だろうけど。
ちと話がズレた。ともかく。明日の生姜焼き弁当を食べる際、少し心が痛むことうけあいですよ。

トンコ (角川ホラー文庫)

トンコ (角川ホラー文庫)