「100FEET」


エリック・レッドは私の中で神格化されている監督(脚本家)の一人。
フィルモグラフィーを押えている訳ではない*1のに、「ヒッチャー*2と「ニア・ダーク/月夜の出来事」*3のシナリオ、「ボディ・パーツ」冒頭の自動車事故シーン*4、そして監督・脚本の「ジャッカー」*5で、個人的評価は確定されてしまった。「バッドムーン」がどんなにつまらなかろうと、この評価はもう覆らないのだ。
と、いうわけで、レッド12年ぶりの新作が晴れて日本でもリリースされたと聞いて、速攻で借りてきた。なんといっても12年ぶりの新作・・・正直、個人的にはキャメロンの「アバター」を観るよりも緊張しつつ*6、微熱をおして鑑賞。
 
うん、確かにDV夫を殺してしまった奥さんが警報機はめられ自宅軟禁。外に出たら自動的に懲役10年追加という状況でDV夫が化けて出たのでさあ大変!というワン・アイデアは正直そそる!
・・・が。(以下ネタバレあり!)
そのワン・アイデア以上のものがまったく仕込まれてなかったのがなぁ・・・まずDV幽霊が何したいのかよくわかんない。単に殴りたいだけなの?何か彼が化けて出る理由というか、隠された真実があるかと思いきや、なんもなし。
ヒロインがDV受けるシーンがあまり描かれない*7のもどうなんだろう。トーチャーポルノ風にしろとは言わないけど、ヒロインのヤバイ状況ってのがあまりこちらに迫ってこない。おそらく終盤の見せ場に温存しておきたかったんだろうけど・・・せめて序盤に生前のDVシーンでもあれば、こちらももうちょい危機感を覚えられるのだけどな。
DV夫も生身の反撃が当たる時もあれば、まったく不可触な時もあり、アメリカ映画で散見されるゴーストの描き方の一貫性のなさが本作でも健在なのもいただけない。
で、ラストも唐突。突然姿を現し大暴れなDV夫のせいで家全焼。そしてこれまた、突然の○×にこちらが呆然。
同僚の警官とか、絶対裏でなんかあると思ったのになぁ・・・
DV夫はホント、何がしたかったんだろう。奥さんが連れ出されそうになって大暴れしたってことは、ずっと我が家で奥さんを殴り続けるDVライフを継続したかったってことなんだろうけど・・・そんな彼の執拗な性格を、やはり生前の姿で表現しておくべきじゃなかったかなぁ。
直前にライミの「スペル」を鑑賞しちゃったのも、いけなかった。似たジャンルなので、どうしても比較してしまって・・・びっくらかし映画としても、ゴースト映画としても、足元にもおよんでいないんだよね・・・
ファムケ・ヤンセンは結構熱演しているんですけどね。転げ落ちたり引き摺られたりと大健闘。殆ど彼女の一人芝居状態なので、ファムケ好きにはたまんない映画ですよ。
印象的なのは、若い恋人とのエッチの最中、DV夫が覗いてるのに気付いて最初は慄くものの、やがて挑戦的な視線を送りつつ快楽に没頭するシーン。さすがは元ゼニア・オナトップ*8って感じで、あそこでDV夫がショックのあまり成仏しちゃった方が面白かったな(笑)
あと、にゃんこが無事で良かったー。そこらへんも「スペル」とは真逆だなぁ。
 
と、いうわけで、ちょっと残念な復帰作ではあったけれど、やっぱりエリック・レッドBOXとか発売されたら買っちゃうと思います!*9

*1:むしろ未見の作品のが多いのではないかな・・・

*2:色々な意味で完璧

*3:主人公と最期のオチがアレだけど、ランス・ヘンリクセン率いる吸血鬼集団が素敵すぎる。ヒロインも超美人

*4:個人的に「デッドコースター」のそれより好み。この映画もオチがなぁ

*5:緊迫感といい凄絶なラストといい文句の付け所がない。補聴器付けた老殺し屋がナンセンスとかいう奴は天国のロイ・シャイダーに謝れ!「ジャッカー」マジ最高!なんでDVD化せんのよ!プンスコ

*6:というのも、彼は結構駄作も撮っちゃう人なので^^;

*7:翌日顔に痣がある、とか、建物の中から悲鳴や懇願の声が聞こえるだけとか

*8:「007ゴールデンアイ」でファムケ・ヤンセンが演じるビッチw

*9:まぁ、本作を観る限り、その可能性は低そうですが^^;次回作はケッチャムの「オフシーズン」でしたっけ?今度は頼みますよ〜