「ハート・ロッカー」短評


アクション映画というより戦争ドキュメンタリーを1本観た印象。ドキュメンタリー調のカメラワークに加え*1、明確なストーリーラインがなく、ちょっと無鉄砲な後任班長の指揮する爆弾処理班のバクダッドでの日常が、特に劇的に盛り上げるでもなく描かれている。
こう書くと「結構淡々とした映画なの?」と、とられそうだけど、さにあらず。
「明確なストーリーラインがなく」、「劇的に盛り上げるでもない」にもかかわらず、131分間、中弛みなく全編を支配するこの緊迫感!
ただでさえ爆弾処理がメインなのでそれだけでも「いつ爆発するか」という緊張感が半端ないのに、そこに主人公(戦争中毒)の無謀とも思える半自殺志願的爆弾処理が拍車をかける。
彼が単なる非人間的なサイコさんなら、こちらもそれほど心配しないのだけど、結構人間的な部分も残していて、戦争中毒を自認しつつも「揺れ」まくっているから、良い意味でタチが悪い。
さらに、冒頭や中盤、有名俳優達がアッサリ肉塊と化すことで、「あ、特別扱いなしなのね」という戦場の現実を突きつけて、巧みに観る側の安心感を削いでくれるし。
そして、たった38日間の間に描かれた爆弾の数といったら・・・爆弾がホントに日常茶飯事で、「戦後の治安維持」という近代の「戦争」の怖さが身に沁みます。バクダッド怖いよぅ。
やはり、「おっかない」という感想しか出てこないな・・・本当に、映画を観た気がしません。勿論、良い意味で。
 
個人的には狙撃手と観測手の正式な狙撃スタイルが観れて嬉しかった。かなり昔に何かの映画で1度観ただけだったので、ダン・シモンズの「ダーウィンの剃刀」を読んで以来、是非映像で観たいと思っていたのですよ。夢がかないました。
それにしても、キャスリン・ビグロー久しぶり。かなりスタイルが変わっている、というか映画の題材にあわせて手法を変えたのだろうけど、昔を懐かしむには旧作のイメージが微塵もないのに驚きました。まぁ、「ニア・ダーク」と「ハート・ブルー」しか観ていない俺が語れるものではないのだけど。もしかしたら同じ軍隊&野郎ども映画「K-19」もこういうスタイルなのかな?
最後に、「ハート・ロッカー」の公開館数の少なさ・・・これは何事?東京でも僅か数館とは・・・いくらなんでも少なすぎ。そりゃ家族連れまで呼び込める娯楽アクション大作ではないけれど・・・オスカー取ったら、この状況変わるのかなぁ?是非作品賞か監督賞あたり獲っていただきたいものです。

*1:おかげでブレるカメラに弱い同行者のK島氏は酔っちゃって鑑賞どころではなかったらしい><