「マタンゴ」短評



マタンゴ」は昔から1度観たかったので、初めて「東宝特撮映画DVDコレクション」を購入。
いやー、なんて丁寧な映画なんだろう。
マタンゴの造型なんかより、映画として「嘘をつく」ことにここまで丁寧な映画*1は久しぶりに観ましたよ!
ヨットを見舞う嵐のエフェクトと、その嵐でボロボロになったヨットの外観、コケに覆われ1年前に難破したという設定難破船の説得力、雨季を経て毒々しさを増す孤島、そしてなにより冒頭とラストを締めるあえてミニチュアで製作されたビル街の遠景!
昔の日本映画って、こんなにも丁寧だったんですね・・・特撮が、「凄い画を見せる」よりもまず「画面に説得力を持たせる」ために使われている。近年の説得力ズタボロなTV局主導の日本映画に爪の垢を煎じて飲ませてあげたいです。
勿論時代が時代ですし、そこは当然「嘘に説得力持たせるために演出レベルで工夫してるなー」というのは見えちゃうんですけどね。CGもない時代の技術的な制約の中、演出・脚本・特撮の合わせ技で、そこらへんの最新映画顔負けの説得力を獲得することに成功しているところが、素晴らしい。
次第に疑心暗鬼に駆られていく登場人物も良いですよね。社長とか情けなくて最高w
主人公の回想というコンセプトも、なんとなくラブクラフト作品を想起させてイイ感じ。
最後に見せるある姿から、「もしかして清廉な主人公も実は食ってたんじゃない?いやそれ以前に主人公の物語る内容が真実って保障ないよね?」という深読みが出来るのもグゥ。
人喰いシーンこそないけれど、ゾンビ映画的側面もありますよね。雨季のマタンゴが生茂った孤島とカラフルな電飾に彩られたビル街のビジュアルの類似性が表すように、ロメロ的な現代風刺でもあるし。
これが製作は昭和38年の作品ですからね・・・感動すら覚えます。
こりゃ原作*2も読んでみたいなー。今手に入るのだろうか・・・あと、確か角川ホラー文庫で「マタンゴ」の後日譚が出てましたよね。これもちょっと読んでみたい。*3

*1:特に日本映画では

*2:W・H・ホジスン「闇の声」

*3:う〜ん、「WORLD WAR Z」の後にマシスンの諸作が控えているというのに、読書スピードが追いつかない^^;