「インセプション」短評

※一応ネタバレには配慮したつもりですが、前情報を仕入れないことを強くオススメいたします!

面白かった。単純に面白かったです!
ビル群がぐわーって折り畳まれていく例のビジュアルを大画面で観たいがために足を運んだのですが、正解でした。
前知識は「他人の夢の中に入り込む」「『ニューロマンサー』っぽい」くらい。
で、まず凄いな!と思ったのが『夢の中への侵入の理屈・手順をほとんど説明しないままなんとなく納得させちゃう演出』
耳に優しくない理論とか、疑問を煙に巻くための珍ガジェットとか使わずに、さも「こうすれば出来るでしょ?忘れちゃったの?」*1とでも言わんばかりに、極めて自然に他者の夢に侵入する主人公達。その違和感の無さといったら!
圧倒的なビジュアル以前に、まずその「嘘のつきかたの上手さ」にえらく感銘を受けてしまいました。
前述の珍ガジェット、というか、SF方向に舵きりをしなかったのも、この作品に限っては賞賛したいです。
勿論、私は未来世界でSFガジェットばりばりの作品も大好物なわけですけど、この映画は大前提である夢に絡む「嘘」があまりに上手なので、嘘を世界観で庇う必要がないんですよ。
そして、夢のビジュアルを現実ベースにすることで、よりその変化・変貌が真に迫って見えてくる。
次に、「プロフェッショナル集団がチームプレイで任務を達成するストーリー」として、普通に面白い点
驚いたことに、ディカプリオの一人舞台じゃないんですよ。ケン・ワタナベだけじゃなく、ジョゼフ・ゴードン=レヴィットもトム・ハーディもディリープ・ラオも、勿論紅一点エレン・ペイジだって印象的な活躍をするんですよ。
おまけに、クライマックスはタイムリミット・サスペンス!しかも重層的な!
ディカプリオを脅かす過去も良かった。単に衝撃的な事実、というだけでなく、ちゃんと「本筋」に絡んでいるとこなんか、さすがです。*2
結構長尺な映画なのですし、完全にエンタメ作品と言い切るほど「ハリウッド娯楽大作」していないですが、私は一瞬たりとも退屈しませんでしたよ。
夢の設定もさほど複雑ではないし、ちゃんと説明されるおかげで頭こんがらがることもなく、久しぶりに「劇場で観てよかった!」と思えた作品でした♪
 
では、なにかと本作との類似点が指摘されている「ニューロマンサー」がらみで戯言を。
ウィリアム・ギブスンの「ニューロマンサー」はSF小説で最も思い入れのある作品なので、なんかこじつけ気味に関連付けてニヤニヤしていましたw
確か映画化が決定したはずですが、映画版「ニューロマンサー」スタッフは、コレの後だとやりにくいでしょうね!「夢」と「電脳空間」を置き換えたら、結構通ずるところの多い映画ですからw
泥棒集団が世界を股にかけチームを集めていくところなども似てますね。
序盤の舞台が東京なとことかもw
そして登場人物の一人が「モル」・・・綴りとかキャラクター性なんかも全っ然違うんだけど、つい「モリィ」を思い出してしまうw
とまぁ、「ニューロマンサー」の変奏曲として楽しんだ側面は大いにあって、私のこの映画への絶賛には、そういう意味での補正もかかってると思いますよw
 
最後に。この映画の「夢」って、結構法則がしっかりしているんですよね。
夢ネタでは「エルム街の悪夢」シリーズが有名ですが、なんでかホラー好きの私がイマイチこのシリーズに乗り切れなかったんですよ。
ずっと疑問だったのですが、「インセプション」の法則のしっかりした「夢」と、その法則を巧みに利用したストーリーを観て、ようやっと氷解した気がします。

*1:作品世界内でも、夢への侵入がトンデモ技術ではない、と表現されているのもグゥ

*2:ただ、ちょっとディカプリオの前作「シャッターアイランド」と被る部分があって、これはレオのせいでもなんでもないんだけど、ちょっと損してるかな