「デジャヴ」短評


デンゼル・ワシントンには驚かされてばかりだ。先日の「悪魔を憐れむ歌」に続き、『なんか変なSFガジェットが絡む刑事アクション』程度の予備知識でなんとなく録画予約していたのを観たんだけど、いやー、これがまた凄く面白くて、近々発売予定の廉価版Blu-rayをポチってしまいましたよ。*1
※以下ちょっとネタバレを含みますので自己責任でどうぞ!!
まず冒頭のフェリー爆発までの丹念な描写に引き込まれます。老若男女、様々な乗客たちの笑顔。比例していや増す不安感。だって刑事映画ですからね!そして、フェリーが一瞬で業火に包まれる迫力と衝撃!
で、以降も結構「重い」感じを継続していくんですよ。私、いまだにコレがトニー・スコット監督作って信じられないですもん。トニスコの全作品を観たわけじゃないので誤ってるかもしれませんが、もっと「ガチャガチャした撮り方する人」だと思っていたので。
この「重さ」がイイんですよ。この「リアルな感じ」が、中盤から登場するSFガジェットへの第1の緩衝材になっている。
さらに、このSFガジェットの実体を段階を踏んで明かしていくのも巧い。
まずは、「監視映像をCGで再構築して、あらゆる場所を、あらゆるアングルから再度見ることが出来る装置」として登場。
さらに「立体映像の構築に時間がかかるのでン時間前の映像あいか見れず、しかも装置に凄まじい負荷がかかる容量なので巻き戻しは不可」という条件。
「凄い装置だよ!」と言われても、「え〜嘘くさい」と疑うのが人の常ですが、そこに「欠陥」を見せられると、疑いが若干軽減されます。あくまで、軽減ね。
巧いのは、その後に主人公の推測と行動で、それがさらにトンデモなSFガジェットであると、「実は一種のタイムマシンでした!」と、明かされること。
前述の「監視映像をCGで再構築して(中略)見ることが出来る装置」の説明でもコッチは「ん〜?」って疑問が残ってたんですが、その説明を補強するでなく、さらにトンデモなモロSFガジェットであることを明かして煙に巻く、その上手さ!
さらに、最初の疑問や、その装置の欠陥の「え〜?」な部分が、トンデモなガジェットで一気に説明がついちゃうんですよ。
しかも、それが過去を覗くことで主人公も我々観客もたっぷり感情移入した、実時間では既に死んでいるヒロイン*2を助ける可能性に繋がる!
コッチ(=観客)はもう、そのガジェットに積極的に飛びついちゃうわけです。ほらデンゼル、タイムマシンだよ!とっとと彼女助けに行けってば!という具合にw
そう、時間SFなんですね。
で、私がこの映画を観てまず思い浮かんだのは、『涼宮ハルヒの消失』。
勿論ジャンルもノリもまったく違うし、ハルヒの方は過去ではなく改変されたセカイだし。まぁ時間SF要素も絡みますけど。
ハルヒというワン・タイトルというよりは、こういう、ちょいと厨二病ぽいラノベというかアニメというか、そういうテイストを感じたんです。デンゼル・ワシントンの映画でw
だってさー、現実ではもう死んでいるヒロインの過去を文字通り覗き見るうちに惚れちゃうとか、ラノベっぽいっしょ?その彼女を助けるため、時を越えちゃうとか。
で、後半これまた巧く彼女に視点にシフトしていくんですよ。コレが本当に巧いんだ。
ラスト・シーンで、私不覚にもウルっときちゃったもの。○○に感情移入してね。そして、その真相は○○だけが知っていて、微笑む○○は何も知らない・・・コレ、主人公とヒロインを少年少女に置き換えてみてよ!立派なラノベだよ!
で、その何も知らない○○は、でも、一瞬「ん?」となる。「まさかねw」と。
そこで、この映画のタイトルなんだったけ?と思い出してみると・・・!「デジャヴ」!バッチリじゃん!
えー、まぁ。アラとかないわけじゃないんですけどね。でも、
「嘘臭いラノベ設定に説得力を持たせた上にハリウッド大作として完成させちゃった」
ってだけで、私の様な厨ニ病設定ウェルカムな大きなお友達は必見だと思うのです!
なんか可笑しな論調になっちゃったケド!こんな観方する人なんかいなくって、「なんで刑事アクションがSFにー?」という評価が世間一般的かもしれないけど!私この映画大好きです!

デジャヴ [Blu-ray]

デジャヴ [Blu-ray]

で、届いたBlu-rayのケース裏を見て吃驚!上映時間126分て。確か地上波版は特に延長してなかったような・・・どんだけカットしてんだろう。というわけで、再見の楽しみが増えてワクワクです♪
全然話は変わりますが、思えば「悪魔を憐れむ歌」も「デジャヴ」も、刑事モノの皮を被った別ジャンル映画という共通点がありますね。タイトルでさり気なくその正体を明かしているとこもそう。
デンゼルさんこういうの好きなのかな?最近私の中でデンゼル株がうなぎ上りなのでフィルモグラフィーが凄く気になってきてますw

*1:この文章書いてた頃には発売前だったんですが、UPする前に発売を迎えてしまいましたw

*2:演じるポーラ・パットンをずっとハル・ベリーだと思っていたのは秘密w